クロノ×セクス×コンプレックス(3)

最近ライトノベルで個人的趣味にヒットしたものといえば、まずこいつです。みんな大好き、TS*1物。具体的に「みんな」というのは、主としてライトノベルを読む人、エロゲーをたしなむ人、少女小説を読む人です。そう、女性だってTS物は好きなんです。少女系文庫を見てみれば事は明瞭です。男が女になったり、少女が男装したり、大変な忙しさです。男装物とTSは違うんだい!という突っ込みは遠慮してください。逆性を楽しむという変態性はどっちも似たようなもんです。だって男装した少女に恋した男の心うちといったら! ああ! ああ! なんて変態なの!


普通少年、三村朔太郎が美少女ミムラ・S・オールドマンとチェーンジして時間魔法学校へ入学してしまうという話。


何がいいって、ミムラ(体はオンナ、心はオトコ)が可愛いんですよ。中身の朔太郎の純真さと相まって、両性的かつオトコにも甘い素敵な人物に仕上がっています。数々のイベントを通して「もう男でもいいかも?」と思わせてくれます。どうせ外面はオンナなんだし? 問題なくね?


まじめな話をすると、ミムラの入学するクロックバードの雰囲気は、ハリーポッターを読んだことがある人ならばホグワーツをより閉鎖的にし、魔法をちゃんとしたファンタジーの時間操作系に置き換えた世界を想像すれば近いところまでたどり着けるのではないでしょうか。そう、時間操作です。この物語、いわゆる過去改変物なのです。タイムパラドックスです。みんな大好き、ループ物。いやループはしてないんですが。ちなみにここで言う「みんな」とは、SF(少しふしぎ)好きな人、エロゲーが好きな人です。少女が好きなのかはわからない。少女系で時間物は読んだことない気がするなぁ。まぁエロゲーにはループ物にはハズレなしという格言がありまして。これはループ物(≒時間物)は構成が面倒なのにそれをわざわざ作るくらい製作者に気合が入っているため、出来が悪い確率が低いという意味なのですが。


本作はライトノベルなのに、こんなめんどくさい題材を扱うだけあって物語の密度と展開の上手さはチョーいー感じです。よく練られて、かつよい切れ味を持っています。ミムラが将来、時間犯罪を犯して「永久時間剥奪者」となることは1巻で暗喩済み。2-3巻ではその動機が示されています。次巻以降ではどのようにしてミムラが過去改変という時間犯罪を行うのかが示されるのでしょう。そして真のヒロイン、極上のツンデレ美幼女オリンピアミムラを止められるのか。あるいは解決できるのか。

まさに目が離せません。

*1:性転換、男女が入れ替わる。